「東京都で建物を建てるときに“環境計画書”って提出しなきゃいけないの?」「CASBEE評価も必要って聞いたけど、よくわからない…」
そんな疑問をお持ちの設計者や建築関係者の方も多いのではないでしょうか?
東京都では、環境確保条例に基づき、一定規模以上の建築物に対して環境計画書の届出が義務付けられています。
この制度では、CASBEE(建築物総合環境性能評価)を用いた評価結果の提出が必要となるため、環境性能に関する知識と準備が欠かせません。
本記事では、東京都の環境計画書制度の基本から、届出の対象となる建物、CASBEE評価の方法、提出の流れまでを初心者の方にもわかりやすく解説します。
この記事を読めば、「何を、いつまでに、どう提出すればよいのか」がスッキリ理解できるはずです!
この記事でわかること
- 東京都における環境計画書制度の概要と目的
- CASBEE評価を用いた届出の仕組み
- 届出が必要となる建物の条件(規模・用途・地域など)
- CASBEEの評価ランクや使用ツールについて
- 届出の流れと必要書類の準備方法
- 設計段階で注意すべきポイントと実務上のアドバイス
東京都の環境計画書制度とは?
東京都では、「環境確保条例」に基づき、一定規模以上の建築物を新築・増築・改修する際に、「環境計画書」の提出が義務付けられています。
この環境計画書の中で、建築物の環境性能を評価するために用いられているのが、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)です。
環境確保条例に基づく制度
東京都環境確保条例では、建築物が地域や地球環境に与える影響を低減するために、建築主に対して環境配慮の方針と具体的対策を記載した計画書の届出を求めています。
CASBEEを活用した評価が必要
環境計画書の提出対象となる建築物は、「CASBEE東京都(建築)」を使って建物の環境性能を評価し、その結果を添付する」ことが求められます。
この評価は、環境計画書制度の中核となっており、建物の省エネ性・資源循環・周辺環境配慮などが定量的に評価されます。
CASBEE評価ランクについて
評価結果はS・A・B+・B・Cの5段階で表示され、「B+ランク以上を目指すことが推奨」されています。
ただし、評価そのものが必須である一方、ランク達成の義務は自治体の指導方針によります(※設計段階での配慮は重要です)。
ポイント💡
環境計画書制度は、単なる書類提出ではなく、設計段階から環境性能を確保する設計思想が問われる制度です。
「ただ出せばいい」ではなく、「環境に配慮した設計と評価」が求められています。
届出が必要な建築物・提出義務
東京都の環境計画書制度では、建物の規模や用途によって、届出が義務付けられるかどうかが決まります。
提出の有無だけでなく、「どの段階で・どの様式で提出するか」も決まっているため、計画の早い段階から確認が必要です。
対象となる区域
原則として、東京都全域(23区および多摩地区の一部)が対象となります。
ただし、建物の所在する地域によっては、区や市が独自に補足的な基準を設けている場合もあります。
対象となる建築物の条件
以下のいずれかに該当する場合、環境計画書の提出が必要です。
区分 | 建築物の延べ面積 | 届出区分 | 主な対象用途例 |
---|---|---|---|
大規模 | 10,000㎡以上 | 届出書(第一種) | 大型商業施設・病院・事務所ビルなど |
中規模 | 2,000㎡以上 | 届出書(第二種) | 中規模ビル・店舗・集合住宅など |
※上記は代表的な目安であり、詳細な基準は各自治体の条例に従います。
用途による注意点
- 住宅系建築物(集合住宅含む)も対象になるケースあり
- 非住宅用途(オフィス・店舗・工場など)では、届出対象になる確率が高い
提出タイミング
多くのケースでは、建築確認申請を提出する前の段階で、環境計画書の届出が必要です。
これを怠ると、建築確認が受け付けられないこともあるため、スケジュール管理が重要です。
ポイント💡
- 2,000㎡以上で届出が必要になる可能性が高い
- 確認申請の準備と並行して、環境計画書の作成・評価が必要
- 早めのチェックがトラブル防止につながります
評価に使うCASBEEツールと提出ランク
東京都の環境計画書制度では、建築物の環境性能を客観的に評価するため、専用のCASBEE評価ツールを使用する必要があります。
このツールで算出された評価ランクは、環境計画書の中で報告し、一定以上の性能が求められるケースもあります。
使用するツール:CASBEE-東京都(建築)
東京都の制度で使用するのは、「CASBEE-東京都(建築)」という評価ツールです。
これは、一般のCASBEE(全国版)を東京都の基準に沿って調整したものです。
- 最新版は東京都環境局の公式サイトからダウンロード可能
- Excelベースで動作する評価シート
- 評価者による入力+建築主等の確認が必要
評価の内容とランク制度
CASBEEでは、建物の環境性能を以下のような観点で評価します:
- 建物の環境品質(Q値)
- 建物の環境負荷(L値)
これらのバランスにより、建物全体の評価ランク(S・A・B+・B・C)が算出されます。
東京都で求められる評価水準
東京都では、「B+ランク以上が望ましい」とされています。
ただし、現時点ではランクそのものに法的な義務はなく、「届出」として評価結果を提示することが求められています。
提出時の注意点
- CASBEE評価は自己評価ではなく、有資格者(評価者)による入力が基本
- 評価結果の正確性が求められるため、設計初期から連携が必要
- 提出書類として、評価結果のPDFやExcelファイル、根拠図面が必要になることも
ポイント💡
CASBEE評価は、単なる数値の算出ではなく、設計内容の見直しや改善提案にも活かせるものです。
義務的な対応と同時に、建物の付加価値を高めるチャンスとして活用しましょう!
提出の流れと必要書類
東京都の環境計画書制度において、CASBEE評価結果を含む環境計画書は、建築確認申請前に提出するのが原則です。
提出までの流れを理解し、必要書類を早めに揃えることで、確認申請もスムーズに進められます。
(「建築基準法の確認申請等の日」又は「都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく認定申請の日」のいずれか早い日)
環境計画書提出の基本的な流れ
- 届出対象かどうかを確認
- 延べ面積・用途・所在地によって届出義務を判断
- 設計内容を基にCASBEE評価を実施
- CASBEE-東京都(建築)を使用
- 有資格者(評価員)による評価が望ましい
- 環境計画書の作成
- 評価結果を含めて、必要事項を記載
- 書式は東京都環境局からダウンロード
- 提出(電子・書面)
- 東京都環境局または各区の担当課へ提出
- 一部地域では電子申請対応あり
- 建築確認申請
- 環境計画書の届出が済んでいないと、確認申請が受理されない場合もある
主な提出書類
書類名 | 内容・注意点 |
---|---|
環境計画書(届出様式) | 東京都が定める書式に沿って記入(第一種・第二種) |
CASBEE評価結果報告書 | CASBEE-東京都(建築)で算出した結果を添付 |
評価根拠図書(図面一式) | 平面図・立面図・断面図・仕様書など |
設備計画書(必要に応じて) | 空調・給湯・照明・換気等の設備性能情報 |
提出先と方法
- 原則は東京都環境局(都市づくり政策部)ですが、特定の区や市では区役所の建築担当課が窓口となる場合もあります。
- 一部自治体では電子申請や事前相談窓口も設けられています。
ポイント💡
- 提出前に「確認申請スケジュール」に照らして余裕を持った準備を!
- 設計図面・省エネ計算と並行して環境評価を進めるのが効率的です。
注意点とアドバイス
環境計画書制度は、「提出すればOK」という性質のものではありません。
設計内容と評価が整合しているかどうか、そしてスケジュール通りに進められるかどうかが非常に重要です。
ここでは実務でよくあるつまずきポイントと、その対策を紹介します。
1. 提出のタイミングを逃す
建築確認申請より前に提出が必要なのに、評価や書類作成が遅れてしまい、確認申請のスケジュールに支障をきたすケースがよくあります。
(「建築基準法の確認申請等の日」又は「都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく認定申請の日」のいずれか早い日)
対策:
- 設計初期の段階から、CASBEE評価の準備を始める
- 建築確認のスケジュールと並行して段取りを立てる
2. 設計内容と評価内容が一致していない
CASBEE評価では、入力内容の根拠となる図面や仕様が重要です。
図面の変更が評価に反映されていなかったり、評価内容と実際の建物仕様にずれがあると、提出後に再提出や修正を求められることがあります。
対策:
- CASBEE評価は設計変更後に必ず見直す
- 評価結果に使った根拠図面・仕様書を明確に整理する
3. 使用ツール・書式の不備
古いバージョンの評価ツールを使ってしまったり、東京都指定の提出様式に準拠していないと、受付がされないこともあります。
対策:
- CASBEE-東京都(建築)の最新版を必ず使用
- 提出書式も東京都公式サイトから最新版をダウンロード
4. 評価ランクが足りない場合の設計修正が困難に
B+ランク以上を目指す方針に沿わず、評価がCやB止まりになってしまった場合、再評価のために設計変更を迫られることもあります。
対策:
- 評価が確定する前に、予備評価を行ってランクを確認
- 外皮性能や設備設計で「評価を上げられる部分」を事前に把握しておく
ポイント💡
環境計画書制度は、確認申請と同じくらいスケジュール管理がシビアな制度です。
評価と設計を切り離さず、一体として早期に動くことが成功のカギとなります!
まとめ
東京都の環境計画書制度は、建物の環境性能を見える化し、都市全体の環境負荷を軽減するために設けられた重要な制度です。
対象となる建築物では、CASBEE-東京都(建築)による評価結果を含めた届出が義務付けられており、建築確認申請前に提出が必要です。
一見複雑に見える制度ですが、早めに設計段階から準備を進めれば、確認申請と並行してスムーズに対応することが可能です。
特にオフィスや商業施設などの非住宅建築を計画する際は、環境計画書の準備を見落とさないよう要注意!
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